生物多様性保全に対する基本的な考え方

相鉄グループは、企業による気候関連課題のみならず生物多様性、自然関連課題への対応についても世界的に要求が高まりつつあることを認識しています。これらを経営上の重要テーマと捉え「生物多様性の保全・回復」を取り組むべき 社会課題の一つとして設定しており、再資源化率の向上や環境汚染に配慮した施策の実施を通じて「自然環境負荷低減」を図っています。

相鉄グループ生物多様性方針

相鉄グループは、生物多様性の保全が地域における豊かな自然の恵みの土台であり、事業活動の基盤であることを認識しています。将来にわたり豊かな自然の恵みを享受できるよう、様々なステークホルダーと協働し、生物多様性の保全と回復に向けた取り組みを推進します。

  1. 経営課題としての取り組み
    生物多様性が事業に欠かせない重要な基盤であることを認識し、2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の達成に向けた行動を促進します。
  2. 法規制等の遵守
    生物多様性に影響する国内外の取り決めや法令を遵守します。
  3. 生物多様性に対する依存と影響の把握と改善
    生態系への依存度・影響を確認し、サプライチェーン全体での生物多様性への負荷を低減させ、生物多様性、森林、水源などの保全・回復に努めます。事業活動が及ぼす生物多様性へのネガティブな影響に対しては、回避・低減・代償の優先順位で対策を実施する「ミティゲーション・ヒエラルキー(緩和階層)」の原則を適用します。
  4. 啓発活動
    生物多様性に関する社員教育、ステークホルダーの啓発・連携に取り組みます。
  5. 情報開示とコミュニケーション
    生物多様性に関する情報開示を適切に実施し、お客様や投資家、地域住民、行政、NGO等の幅広いステークホルダーに対する情報提供や対話に努めます。

相鉄ホールディングス株式会社
代表取締役社長 加藤 尊正
2025年9月制定

※本方針は、2025年9月の取締役会において承認を得ており、代表取締役社長が署名しています。

株式会社ディ・エフ・エフ

TNFDに基づく開示

TNFD提言への対応

2022年12月に開催された「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」において、2030年までの新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、生物多様性の損失を止め、反転させる「ネイチャーポジティブ」の方向性が明確に示されました。
2023年9月にTNFD(「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」自然関連財務情報開示タスクフォース)の最終提言が公表され、世界的にTNFD提言に沿った開示対応が進んでいることを受け、相鉄ホールディングスは2025年9月に「TNFD Adopter」に登録しています。
相鉄グループでは、社会とともに持続的に成長するため、「次世代へつなぐ地球環境づくり」、「魅力ある地域の発展と共創」という環境関連の項目をマテリアリティとして掲げており、次世代につなぐ地球環境づくりに取り組んでいます。事業に関する自然関連課題を特定するため、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に基づき、相鉄沿線の周辺エリアを対象に自然との依存と影響関係を特定し、地域分析を実施しました。引き続きLEAPアプローチに沿った評価分析を進め、TNFDの提言に沿った情報開示の充実を進めます。

ガバナンス

(1)サステナビリティ推進体制

相鉄グループは、相鉄ホールディングス㈱社長を委員長とした「相鉄グループサステナビリティ委員会」を設置し、自然関連課題を含む環境負荷の低減に向けた対応方針および実行計画などの審議、各種取り組み実績の総括・評価をしています。これらの内容は、グループ全体に周知・指示する組織である「相鉄グループサステナビリティ推進会議」と、実務者レベルで個別課題を検討する「環境・エネルギー分科会」を通じて、グループ全体の戦略として落し込む仕組みになっています。
また、相鉄グループサステナビリティ委員会での審議、総括・評価の結果を取締役会に付議・報告し、常勤監査役および社外監査役による監督を行っています。

サステナビリティ推進体制を詳しくみる

(2)ステークホルダーに対する方針

相鉄グループでは、環境方針および環境ビジョンのもと、事業エリアにおける自然資本への依存と管理を適切に行うとともに、自然共生社会の実現に向けた取り組みを強化してまいります。
また、相鉄グループでは人権方針を策定し、特に重視する人権課題の一つとして、自然資本に関連する「事業活動を通じた地域住民に安全で安心な生活環境や自然環境の提供」を掲げており、この人権方針を遵守しながら相鉄グループ全体で環境保全に取り組んでまいります。

相鉄グループ人権方針について詳しくみる

戦略

相鉄グループにおける自然関連課題を特定するための手法として、TNFD提言バージョン1.0にて提供されているLEAPアプローチを活用し、事業と自然との関わりについて調査を実施しています。LEAPアプローチとは、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、 Assess(評価する)、 Prepare(準備する)のステップを通じて、自然関連課題を評価するための統合的なアプローチです。初年度の取り組みとして「Locate」ならびに「Evaluate」のステップを中心に、相鉄グループの主要4事業(運輸業、流通業、不動産業、ホテル業)を中心とした直接操業の事業活動と自然との依存と影響関係を明らかにするための調査と分析を行いました。事業活動と自然との依存と影響関係を把握し、相鉄沿線エリアを対象に自然環境特性の分析を通じて要注意地域を特定することで、相鉄グループの自然との関わりを分析・評価しています。
この分析にあたっては、グローバルデータに基づく評価ツールを活用しています。

[分析に用いた評価ツール一覧]
名称 概要 用途
ENCORE 自然資本分野の国際金融業界団体「Natural Capital Finance Alliance(NCFA)」が開発した、経済活動分類別に自然に与える依存と影響のレベルを評価及び可視化したオンラインツール 経済活動分類別に自然に与える依存と影響のレベルを評価
IBAT
(Integrated Biodiversity Assessment Tool)
国際自然保護連合(IUCN)、世界自然保全モ二タリングセンター(WCMC)、バードライフ・インターナショナル、コンサベーション・インターナショナルの4団体によって開発された、保護地域、KBA(生物多様性重要地域)の情報を確認できる地理空間データツール 相鉄沿線における、生物多様性の観点での重要地域(KBA、IUCN保護地域管理カテゴリー)の評価
Aqueduct World Resources Institute(WRI)が開発した水リスク評価のグローバルツール 相鉄沿線における、水ストレスの高い地域の特定と接点の確認
GLOBIO Model オランダ環境評価庁(PBL)が開発した、土地利用変化など人の影響が生物多様性に与える影響を定量評価できるモデルツール 相鉄沿線における、生態系の十全性が高い地域および急激な低下が想定される地域との接点の確認

(1)依存と影響項目の分析、評価

相鉄グループは、直接操業している事業活動と自然との依存と影響関係について、ENCORE分析結果を参考にしつつ、事業実態を鑑みて評価しました。
主要4事業(運輸業、流通業、不動産業、ホテル業)およびその他(都市ガス供給や浄水システムなど)においては、GHG排出や大気汚染物質などの影響が大きく、水質浄化などの調整サービス、景観提供の文化的サービスなどの依存が大きいと認識しています。

[自然資本に関連する事業プロセスとヒートマップ評価]
自然資本に関連する事業プロセスとヒートマップ評価

(2)要注意地域の把握

相鉄グループは、操業拠点における自然とのかかわりを把握するため、TNFDで定義されている生物多様性の観点で重要である「要注意地域」の把握を行いました。相鉄沿線の各駅を対象に、生物多様性の重要性を確認するため、保護区やKBAとの位置関係、水ストレス、生態系の十全性の分析を実施し、保護区などに所在または近接する場合に、当該駅の周辺拠点についても対象に含めて分析を実施しました。

  • KBAについて
    KBAとはKey Biodiversity Areas(生物多様性重要地域)の略で、陸上、淡水、海洋の生態系において多様な自然が存在する場所であり、生物多様性の世界的な存続に大きく貢献している場所を指します。
[要注意地域に近接する拠点数]
路線名 駅名 要注意地域名 IUCN
保護地域管理カテゴリー
要注意地域と近接する拠点数
(重複する拠点数)
相鉄本線 かしわ台 清水寺公園 / 鳥獣保護区 IV 5(1)
相鉄本線 相模大塚 泉の森 / 鳥獣保護区・特別緑地保全地区 IV・V 1
相鉄本線 希望ヶ丘 長屋門公園 / 鳥獣保護区 IV 5
相鉄いずみ野線 南万騎が原 こども自然公園 / 鳥獣保護区 IV 11
  • IUCN保護地域管理カテゴリー:世界や国・地域などのレベルで重要な植物・動物種や生息地の保護や回復を目的とした保護地域のカテゴリー
[相鉄グループ鉄道沿線と保護区の所在関係]
相鉄グループ鉄道沿線と保護区の所在関係

分析の結果、相鉄沿線の各駅において、水ストレスが高い地域および生態系の十全性が高い地域での操業はありませんでした。一方、保護区については、操業拠点で所在並びに近接が見られました。

  • 近接とは相鉄沿線の各駅を中心とした半径1km圏内に保護区が存在していることを指しています。

沿線の一部拠点については、保護区に所在または近接しておりますが、該当拠点の事業と自然との依存、影響関係を鑑みると、自然環境との関わりが強い事業活動は行われていないことを確認しています。
しかし、近接する保護区のみならず、沿線周辺の豊かな自然環境の保全は、沿線の住みやすさにつながり、更には沿線価値向上に寄与するものと認識しています。これからの沿線価値向上の取り組みの際には、今回の分析結果を利用し、ネイチャーポジティブに資する活動を実施してまいります。

[事業拠点における水リスクの把握]

相鉄グループでは連結子会社を含む事業拠点における水ストレスレベルの高い地域を特定するために、WRI(世界資源研究所)が開発したWRI Aqueductツールを用いて、国内外全ての事業拠点 ※1の水ストレスレベルを定量化し、水ストレスの高い地域を特定しました。

全般的な水リスク

水リスク(OVERALL RISK※2) 拠点数 割合
Low (0-1) 2 0.5%
Low - Medium (1-2) 367 98.9%
Medium - High (2-3) 1 0.3%
High (3-4) 1 0.3%
Extremely High (4-5) 0 0.0%
合計 371 100.0%
  1. 2024年5月31日時点
  2. OVERALL RISK:水ストレス・枯渇・季節変動・河川洪水・干ばつ・未処理排水・衛生設備など各項目合算の全般リスク

リスクと影響の管理

相鉄グループでは、自然資本との依存と影響を把握したうえで、リスクとなり得る項目に適切に対応するべく、グループ全体でリスクマネジメント体制を整備しています。
依存と影響の特定にあたってはLEAPアプローチに基づき、特定および評価を行っています。特定に際してはENCOREによる分析結果を参考に、事業の実態などを考慮して、その重要性を評価しています。
また、分析で特定された依存と影響項目については、ガバナンス体制と同様の体制で管理され、グループ全体の戦略として落とし込む仕組みになっています。

相鉄グループでは、事業活動から生じる自然関連の依存と影響によるリスクを特定し、環境負荷の低減に向けたさまざまな対応策の検討を「相鉄グループサステナビリティ委員会」と「相鉄グループサステナビリティ推進会議」が中心となり、各事業会社と協働して行っています。TNFD提言に基づく検討結果についても、グループ全体のサステナビリティの取り組みの基本方針その他重要事項の決議、業務執行の最終決定を行う取締役会に報告され、その内容について議論・検討を行っています。分析手法として使用したLEAPアプローチのうち、Assess(評価する)および Prepare(準備する)において、評価した自然に関する依存と影響を踏まえ、相鉄グループにおける自然関連課題リスクと機会およびその評価プロセスについて改めて検討し、今後の対策に取り組んでいきます。

指標と目標

TNFD提言にて推奨されている開示指標である「グローバル中核指標」では、環境に係る項目が設けられています。相鉄グループでは、生物多様性や自然資本の損失の回避、状態の維持・回復・改善を目的として当社グループ独自のKGI、モニタリング指標と目標の設定、対象データの収集を進めています。
なお、現時点の開示指標については以下のとおりです。

指標 目標(2030年度) 2024年度実績 バリューチェーン区分 測定指標番号
KGI CO₂排出量 ※1 (Scope1・2) 42%削減 ▲2.2 % 直接操業 上流
モニタリング 指標 廃棄物使用量 ※2 10,600 t 直接操業 C2.2
リサイクル率 ※2 78.9 % 直接操業 C2.2
水使用量 ※3 2,433 千㎥ 直接操業 C3.0
  1. 相鉄ホールディングスおよび国内連結子会社が対象
  2. 相鉄ローゼン、相鉄ホテル、相鉄バス、相鉄ビルマネジメント(一部施設)が対象(今後範囲拡大予定)
  3. 相鉄ローゼン、相鉄ホテル、相模鉄道・相鉄バス・相鉄ビルマネジメント(一部施設)が対象(今後範囲拡大予定)
株式会社ディ・エフ・エフ